信念体系クラッシュ

 

幼少時代より虚弱体質で、幼稚園や学校は休みがちだったため、友達もいなかった。

一人布団の中で、空想の世界で遊ぶことが好きだった。

空想の世界も、夢の世界も、とてもリアルで、感触まで鮮明に記憶していたため、記憶の中では、夢と現実の区別がつかなかった。毎日のように空想の世界で遊んでいたのだが、想像することにも飽きて、ネズミの世界に遊びに行ったことがあった。それは宇宙空間のような薄暗い闇の中で、まるで洞窟のような入り口だけが、闇の中にポツンと漂っている。入り口はトンネルのようになっていて、そこをくぐって入って行くと、チューブ状のすべり台にようになっていた。そこをすべり下りていくのだ。自分と一緒に、ネズミたちも列を成して滑り降りて行く。それは例えるなら、ウォータースライダーのようなイメージだが、チューブ状のものは透明だった。なぜネズミの世界だったのか、全くわからないが、この出来事はもの凄く興奮したとても印象的な場面だった。

 

ある時、蒸気機関車を探しに、記憶を辿って遠出をしてみたことがあったが、見覚えのある辺りには、どこにも線路なんてなかった。あれは夢だったのか・・・と、衝撃を受けた出来事だった。あの出来事を経験して以来、夢と現実を考えるようになっていった。

そして時を同じくして、空想の世界で遊ぶことも、やめてしまった。

 

2007年に、ブルース・モーエンのワークショップに参加して異次元を訪れた時、あまりにも鮮明で、リアルな体験に戸惑った。素肌に心地良い風の感覚や、美しく輝く新緑の匂いまで、現実の世界との区別がつかなった。

どちらが現実で、どちらが想像なのか・・・。
そう、まさに自分が今存在している場所こそが、現実なのだ。
この時に受けた衝撃は、ある記憶を呼び覚ました。

想像の世界のはずなのに、感触まで鮮明に記憶している・・・。

幼い頃に散々遊んだ空想の世界は、創造され、現実に存在していたのだ。

想像力によって創造された世界は、人間の意識の世界の中に、本当に存在していたのだ。

 

すべてを理解した時に、自分自身が粉々になって、崩壊していくのを感じた。

小さな小さな断片に分裂し、飛び散ってしまったのだ。

思考回路は機能せず、意識は深い闇の中でループし続けた。

 

信念体系クラッシュ。

 

自分では何も考えられず、流れゆく日常を、まるで部外者のように眺めているだけだった。

行き交う人々が、生きとし生けるものが、あらゆる存在が、今この瞬間が、ただただ愛おしく、涙が溢れ出る日々。

何も手につかないまま、一つの感覚にずっと繋がり続けていた。

完全に崩壊してしまった自分を繋ぎとめていた感情は、『愛』だった。

無意識ではあったが、愛のエネルギーを感じ続けていた。

そうすることだけしか、できなかったから。

自我が崩壊した時、そこには『愛』だけしか存在していなかった。

 

やがて粉々に砕け散った断片を、一つ一つ包み込む、自分自身の再統合というプロセスを経験した。すべての経験という記憶を、『愛』で包み込んでゆくのだ。